Macross 117 「マオの旅立ち」第2話
最初の飯田線遠征は、マオにとって素晴らしい経験となった。
こんなにも近くに自分が投入できる対象が出来た。サラに伝えるべきものがここに在った。
この後マオと鉄子は、何度も飯田線に挑み路線や歴史を調べて歩いた。そのうちマオはあることに気が付く。
私が今後学校でいい成績を残し卒業したとしても、宇宙に出る事は難しいと思う。それよりももっと的を絞っていけば何とかなるのではないか、「そうだ歴史だ!」私にはDNAに刻み込まれたプロトカルチャーの歴史がある。No1になれる。最先端の文化人類学者も知らない秘密を私は知っている。現在では軍によって封印されているが、プロトカルチャーを研究している機関が絶対どこかにあるはずだ。
マオと鉄子は休日となると飯田線に通いつめた。そんな二人を周囲はおたく女とさげすんだ、でも二人にはそんな言葉はなんでもなかった。鉄子は撮り鉄、マオは自分の中のDNAの覚醒のため飯田線の風景を楽しんだ。その頃人類はゼントラーディーとのファーストコンタクトを果たし、地球初の宇宙戦艦マクロスは宇宙へ出て行った。
マオと鉄子はやがて地元の大学へ優秀な成績で入学する。大学内では宇宙に飛び立ったマクロスのことで持ちきりであった。マオもその輪の中に入って行きたかったが、自分の夢を優先させるため鉄子と共に飯田線に通った。勿論マオの通う大学には文化人類学など無い。

マオは独自に論文を完成しつつあった。やがて自分自身が宙に飛び立つために。
マクロスは地球に一旦帰還してまた宇宙へ出て行ってしまった。

二人は再び飯田線に挑んでいた。今日も最高の一日になるはずだった。二人は鉄子の実家がある小和田駅まで来ていた。この駅は飯田線を使わないと来ることが出来ない。秘境駅ランキング全国第2位の駅で、その周辺には何も無い。対岸には道路があるがこちら側にはつながっていない、陸の孤島と言われる場所だ。

その時二人の周りに閃光が走る。そこらじゅうで爆発が起こり地面が大きく揺れた。対岸は火に包まれ猛烈な温風が二人を襲った。何が起きたのか二人には分からなかったがこれはボトル基幹艦隊の地球への容赦ない攻撃であった。二人のいる場所は目標物の一切無い所なので直撃を免れたようだった。
周りの木々は大きく揺れ天竜川の水は一時荒れ狂ったが、数時間後それも治まると川の水は再び平静を取り戻し流れていった。大きく姿を変えながら。
2人は鉄子の実家に急いだ、携帯は使えない。飯田線の線路も大きく蛇行していて当分電車は通れない。
この惨状だと再びここを電車が通ることが出来るかどうかは定かでない。そんな二人の目の前に崩落した崖が広がっていた。道が完全に閉ざされている。
二人は肩を落とし駅まで引き返したが、鉄子の落ち込み方は酷かった。年老いた両親が近くにいるのにそこへ行くことが出来ない。安否も気になる。
マオはそれよりもこの異常な事態の原因が気になっていた。爆発以後この周辺以外原型を留めていない。鳥の人の恐ろしい破壊力を目の当たりにしているマオは、「再び鳥の人が襲来してきたのではないだろうか?」そんな気がしていた。
マオは水と食料を探した。鉄子はショックで動けなくなっていた。崖下には天竜川が流れているが行けそうにない。その時土砂降りの雨が降ってきた。爆発によって蒸発した地球上の水分が雨となって至るところに降ってきたのだ。
水を集めることは、得意のマオだった。マヤン島においての飲み水は、山奥の聖地まで取りに行くか雨水を集めるしかない。そのことがここで役に立った。「これで暫くは凌げる後は食料だ」。土砂降りの中マオは食料を求め歩き回る、雨のためか周りは暗くなってきた。食料は見つからなかった。やがて雨は上がり雲が切れてきた。宙の彼方が閃光を放っている。
マオは不安になる。再びあの閃光がここに落ちてくるのではないか?でも避難する場所も無い。やがて一際大きな閃光が走ると宙は静かになり、星の海が現れた。
マオは日本に来て初めてこれほどの星を見る。これはこの場所がそうなのか先ほどの閃光がそうしたのか分からない。マオは鉄子を見る。鉄子は死んだように眠っていた。
夏場で良かった。もし季節が冬だったらとても生存は望めない。ここには駅舎もある鉄子の実家に泊まる為に着替えも持ってきた、二人はその日、より添うように眠りに付いた。「夢だったら良いのに」マオは深い眠りに付いた。

翌日は快晴だった。天竜川は昨日の雨のおかげで濁流が渦巻いて所々崩れていた。周りの様子は豹変していた。マオは鉄子を待たせると食料確保の為山に入る。助けがくるとは思えない。自分たちで生き抜くしかない。自分だけなら生き抜く自身はある。木の根を食べてでも生きて行ける。でもこの国で育った鉄子には無理だろう。マオはこの国へ来てその事を実感していた。
食料を探すマオの前に不意に人が現れた。鉄子の父親であった。二人は鉄子のいる駅舎に向かった。鉄子は涙の再会を果たした。やがて鉄子の父親の先導で二人は山の中に入って行った。
昨日来ることになっていた二人を鉄子の両親は首を長くして待っていた。そこへ昨日の大異変、電話は不通となり駅に通じる道も寸断されていた。
明るくなってから二人の安否を確かめる為に道なき道を超えてやってきたのだ。
三人は険しい山を超えていった。マオにとってはなんでもない所だったが、鉄子には本当にきつい行程であったが、やがて鉄子の母が待つ実家に着いた。
鉄子の母は食事とお風呂を準備して二人を待っていた。空腹の絶頂だった二人は、食事に飛びついた。「暖かい」マオはこんなに暖かい料理を堪能したのは久しぶりの事であった。
風呂から出て、二人はそのまま眠り込んでしまった。昨日のことを忘れるように。
翌日二人は、街との連絡が取れなくなっていることを聞いた。マオには予感があった、人類は僅かな人を残し滅んだ。マクロスを急襲した異星人、鳥の人?それとも人類自身の手によって。

鉄子の父親は猟師で山の中を熟知していた。この周辺の山は被害が殆ど無かったそうで、食料は確保できそうだ、水はマオが集めた。鉄子の父親はマオの行動力と見識に驚いた、自分たちの子供とは違う何かを感じた。マオは鉄子の父親の猟にも同行した。
弾薬は、そのうちなくなる。とすれば後は罠しかない。鉄子の父親もこの分野では相当な腕を持っているが、マオの罠の掛け方には舌を巻いた。二人は本当の親子のように山を駆け回った。
そんなある日マオは飛んでいる飛行機を見つける、嘗てシンの乗っていた戦闘機に良く似ていた。それ以後マオ達は家の外に火を焚き交代で空を見上げるようになった。
マクロスは地球に降り立ち生存者を探す為にバルキリー隊を各地に放っていた。「こちらスカル1、人工と思われる焚き火を発見これから降下調査します。」やがてマオ達4人はマクロスに降り立った。検査入院の後4人は一軒家に案内された。地球上にはほとんど住むところがなく彼らはマクロス内の放置された一軒家を与えられた。鉄子の両親がマオとの同居を強く希望し、マオはそれを受け入れ4人は家族になった。
この物語は、TV版、劇場版、OAV版、その他マクロスシリーズとは一切関係ありません。
又、著作権侵害の意思もありません。あくまで本人の妄想です。

著作元の関係者の方、問題がありましたらご連絡をお願いします。

doctor_maonome@yahoo.co.jp

戻る TOP 続く