Macross 117 「マオの旅立ち」第5話
やっと夢がかなう。
進宙式当日、第117調査船団マオノーム団長は、逸る気持ちを抑えつつ式典に臨んでいた。
旗艦の名前は、「グローバル」とした。まだ現役の総督の名前だが感謝をこめてこの名を選んだ。初めての民間からの調査船団進宙式のため、多くの報道陣が来ていた。マオは逸る気持ちを抑えつつ祝辞を聴いた。そして高らかに出発のファンファーレが鳴りマオは手を上げた。そして旗艦グローバルを先頭に船団は宙を上っていく、マオの夢を載せて。マオは、未開の宙域を選んだ。マオには僅かだが歌が聞こえた、聖なる巡りの歌が、この宙域から聴こえて来るような気がしていた。
ここまで重ねてきた研究と飯田線めぐりのときに歌った聖なる巡りの歌が、この宙域を指し示していた。

娘のサラは、すでに宙に出て行ってしまった。研究を辞め歌手として銀河を飛び回っている。
研究のほうは優秀な後継者がいた。ランシェ_メイとグレイス_オコナーである。二人は激しく意見をぶつけ合いながらも素晴らしい成果を上げていった。

そんなある日娘のサラよりメールが届く。結婚をすると言うことだった。マオは驚きながらも娘の幸せを願い返事を出す。宇宙の辺境のこの調査船団から式に出席は出来ないが、母として見守っていることを書いて送った。
サラからは、ノームの姓は私が守り子供たちにも伝えると返事が返ってきた。
サラの結婚式は、人気歌手の結婚式と言う事で調査船団にも中継されてきた。その様子を一人の母親としてマオは見守った。
その時マオの元に新しい生物の発見が報告された。
赤い体に、虫のような形態、マオには見覚えがあった。「最初の遺跡調査でゼントランの急襲から私を救ってくれた生物だ。」マオは確信した。
その生物は死にかけていた。
マオ達は生物の延命を図ろうとしたが、まもなく死んでしまった。
マオはこの生物を正式にバジュラとして報告、研究を始めた。
ある日ランシェが研究室に入ると大きなゆれと共に、研究用のバジュラの血液が入った棚が倒れこんできた。ランシェは傷を負い床に倒れこんだ。その上にバジュラの血液が降り注ぐ。すぐに助けあげられたがランシェは血だらけであった。突然の宇宙嵐が船団を襲いかなりの被害が出たのだった。血相を変えグレイスが駆け寄ってくる。二人は無二の親友でどちらが欠けても今の研究は続けられない、お互いにそう思っていた。マオも駆けつけたが、ランシェは何も無かったようにすぐに起き上がって来た。ランシェについているほとんどの血はバジュラのものであり、負った傷はほとんどが軽症であった。ランシェは手当てを受け何も無かったように後片付けに加わった。

1年後、マオの元に娘のサラがやってきた。生まれたばかりの孫を連れて。
サラは、この娘にシェリルと名前をつけていた。マオの顔は嬉しさでいっぱいだった。ランシェにも、もうすぐ子供が生まれる。
サラはシェリルを抱き上げ聖なる巡りの歌を歌った。「伝えなくては、」この子にもマヤンの、プロトカルチャーの文化を。サラは1週間の滞在の後、地球へ旅立った。暫くは育児に専念するつもりのようだった。

ランシェは、二人目の子供を出産し、生まれた娘をランカと名付けた。マオは地球へ帰っていたシェリルの代わりにランカを溺愛した。ランシェは最近体調が優れず、床に伏せるようになってきて、ついには立ち上がれなくなってしまった。マオはグレイスと共にランシェの病気解明に取り組んだ。
ランシェの病気は、感染症のようだったが、未知のものだった。「何故ランシェだけ。」二人は、あらゆる可能性を考えこの感染症を調べた。マオは聖なる巡りの歌を歌っていた。「いつ?何処で?」マオの脳裏にある光景が浮かんできた。「バジュラの血液」。マオはグレイスのもとに走った。グレイスはマオの話しを聞くとすぐに採ってあったバジュラの血液を調べ始めた。
「間違いない、これよ!」二人は血清を作った。祈るような気持ちで、ランシェに投与する。
ランシェの病状は快方に向かっていったが、激しい副作用が彼女を襲っていた。
ランシェは研究室へ戻ってきたが、病気の完治は出来なかった。薬を投与すると確実に細菌は死滅するのだが、脳の一部に転移した細菌が、死なずに生き残って薬を止めると再び増殖してくる。「抑えるしかない。」マオはそう思ったが、グレイスは諦めず狂ったように、この病気の研究に明け暮れた。グレイスは、バジュラを憎むようになっていた。

ランカは、歌が好きだった。マオは聖なる巡りの歌の中から、愛の歌をシェリルの代わりに、ランカに教えた。
マオは、ランカがこの歌を歌うと不思議な感覚が襲ってくることに気づいた。何かを感じるのだ。
マオはランシェとグレイスにその事を伝え研究を命じた。調査船団団長としての責務も重く感じていたマオは、そろそろ後継を指名して引退しようと考えていた。

マオは準備を始めた。
「いつ死んでも必ず姉のサラに伝えなくては」マオは、娘のサラ宛に、手紙にイヤリングを添えて送った。サラは24番目の移民船団、ギャラクシーに乗船していた。
サラからメールが来て、このことは娘のシェリルにも託すと共に、イヤリングはシェリルに贈ったといってきた。

グレイスが、論文を持ってマオの元にやってきた。
それはバジュラを使えば、銀河に障壁のないネットワークが形成される可能性がある。プロトカルチャーのテクノロジーでは超えられない、ホールド断層を越え銀河が一つになると言うものであった。マオはグレイスに、ランシェとの共同研究にするように指示し、二人はこの研究に没頭した。「もしこの内容が本当に実現できれば。」マオは呟き聖なる巡りの歌を歌った。

グレイスが血相を変えてマオの元にやってきた。2体目バジュラが生きたまま捕獲されたとの事だった。
ランシェは生きたままの解剖をしたいと言ってきた。マオは拒否して怪我の治療と開放を命じた。
その夜グレイスは密かにバジュラを解剖していた。どうしてもランシェの病気を治したかったのだ。成果の上がらないまま解剖は終了した。
翌日ランシェがマオに、バジュラネットワークの根本的な問題を提示してきた。バジュラには他の個体より上位存在が必要であった。昆虫の生態における女王の存在であった。
マオは落胆した。「だめだったのね」、そこへ研究員の一人が昨日捕獲したバジュラの死体があることをマオに告げた。
「グレイスの仕業ね!」でも彼女を責める事はできなかった。マオは、ランシェの家族とグレイスを呼び屋外での食事会を行った。グレイスはすっかり落ち込んでいたが、マオとランシェの励ましで元気を少しだけ取り戻していった。
ランカが覚えたての聖なる巡りの歌を歌いだした。
その時突然宙が真っ赤な閃光を放ち始めた。バジュラの急襲であった。仲間を殺されたため、その固体を回収に来たのであった。
調査船団は急襲したバジュラに驚き激しく応戦したが次々に戦力を失って行った。
オズマ・リー少佐は自分たちの甘さにたいし憤慨していた。自分たちが最高の部隊として、今まで何処の部隊と模擬戦や実戦をしても負けたことが無かった。でも生存を果たしたのは、自分だけであった。
前方に脱出ポッドが漂っていた。中には小さな子供が一人、気を失っていた。
オズマはその子を救出し近くの宇宙軍基地へ帰還した。
こうして第117次調査船団はマオを含め壊滅した。一部の生存者を除いて。

グレイスオコナーは、バジュラへの復讐を誓っていた。
続く
この物語は、TV版、劇場版、OAV版、その他マクロスシリーズとは一切関係ありません。
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