Macross 117 「マオの旅立ち」第1話
やっと夢がかなう。
進宙式当日、第117調査船団マオノーム団長は、逸る気持ちを抑えつつ式典に臨んでいた。

あの日、鳥の人と共に宇宙の彼方に消えた姉サラノーム、そのときマオはシンではなくサラを追うことにした。どんなに時間が掛かろうとも、どんな困難が待ち 構えようが絶対にやりぬくことにした。今シンについていけば本当に幸せな未来が待っているかもしれない、でもシンの中にあるのはサラのこと、マオを見つめ る目の奥には常にサラがいる。マオはそんな中途半端な関係が許せなかった。「自分と一緒に来てほしい」。そうシンにいわれた時は心臓が張り裂けそうなほど うれしかった。でもマオはシンと決別した。

その日マオは長老のヌトゥ−ク宅を訪れた。「私は日本へ行く!!」マオの強い決意をヌトゥ−クは覆すことが出来なかった。やっとマオもサラのように聖なる 巡りの歌が歌えるようになって、これから新しいマヤンの歴史がが始まる。ヌトゥ−クはそんな予感めいた思いを持っていた。でもそれはかなわなかった。「マ ヤンの役割は終わったのかもしれないな」マオが去った後、ヌトゥ−クはそう呟くしかなかった。
統合戦争で、マヤン島におきた事は全て軍の最高機密として世に出ることは無かった。でもそこにはマヤンの民が守ってきたプロトカルチャーと人類の関係を一 部の者だけで、人類が続く限り永久に伝承していくことになった。もうこの島は滅んで行くしかないかもしれない。ヌトゥ−クはマヤンの民を集めこのことを告 げる。島民たちは三々五々この島を後にした。この島に残ったのは破壊された自然だけだった。

マオは戦時特例条項で戦時難民として日本に上陸する。当時の日本は戦時下に在っても比較的戦火の少ない地域であり戦争特需で湧いていた。そのため難民を多く受け入れていた。
そこでマオが目にしたものは、マヤン島にいるときには、信じられないような光景だった。ここに来たのが10年後であったなら思わず「でかるちゃ〜」といっ てしまったに違いなかった。山のように高いビル、凄い数の人、道路を埋め尽くす車、夜でも昼間となんら変わらないきらびやかな街、でも一番気になったの は、2本の鉄の棒の上をものすごいスピードで走る電車。シンに聞いた時には、はぐらかされてしまった物だが、落ち込んだとき、考え事があるとき、マオは常 に電車に乗っていた。
やがて移民局よりマオに移住地決定の通知が来た。愛知県豊川市、マオは、入国したときに貰った地図を広げる。通知書に同封された案内と見比べる。日本のほ ぼ中央にある愛知県は日本の産業の中枢になっているらしい。恐らくここは都会だマオは飛び上がった。都会に住みたかったのだ。集合は1週間後の東京駅。
マオは念願の新幹線「ひかり」の車中にいた。今までの電車とは明らかに違っていた。深い座席と広々とした車内、猛烈なスピードで走っているのにもかかわら ずそれを感じさせない快適な車内。この電車で豊橋駅まで向かう。車窓は様々な日本の風景を魅せてくれた。日本にも素晴らしい自然が残っている。マヤンほど ではないが、都会の生活に疲れたらこんな所へやってこよう、そう思いながら車窓を楽しんだ。やがて列車は減速し豊橋駅に到着する。「エッツ思ったより都会 じゃない・・・(^^ゞ」、「でもマヤンに比べたら・・・(^_^;)」気を取り直し指定された2番線に向かう。階段を降りると白地に赤のラインが入った おしゃれな電車が見えた。マオは嬉しくなった運転席の上に客席があったのでマオはそこに乗り込もうとしたが、ここから引率してくれる係官がマオを制止して 反対側の電車を指差す。「マオさんこっち!!」、そこにあったのは古びた1両編成の電車、白地にオレンジとグリーンのラインが入った角ばったその電車をマ オは、呆然と見つめるしかなかった。・・・・「いったいこの電車でどこまで行くの。」出発時に配られた今日の予定表を見る。「10分ぐらいか」自分が何処 に行くのか不安を感じながら電車に乗り込んだマオは隣のホームの列車を見る。「あの電車に乗りたい」、マオの乗りたっかた電車は多くの人々を乗せ先にホー ムを離れていった。
マオの向かった駅は飯田線豊川駅。ここには戦争で家族を失った各国の孤児を迎えるための施設があった。ここでマオはこれから生活を始める。あと1週間ほどで戦災孤児の為の学校も始まる。この時統合戦争は終結を迎えていた。
マオは支給された真新しい教科書を開いた。ろくな教育を受けていないマオには、英語以外はまったくわからなかった。「私には目標がある。」そう呟くとマオは部屋に備え付けられたパソコンを駆使し教科書の内容を探っていく。
パソコンは空母アスカでシンに教えてもらった。ネットサーフィンはお手の物。更にマオにはとてつもない才能が眠っていた。それは創造力と集中力、これを駆使して1週間後には教科書に書いてあることがなんとなくわかってきた。

学校は豊橋市内にある。マオは豊川に来たときに乗った電車で豊橋駅に到着する。ここからは路面電車で学校に向かう。
初日は係官が引率してくれた。マオは3番線の電車に乗ってみたかった。何処に行くのかわからないけど、とにかく乗って見たかった。「でも今優先すべきことは、教養を身につけ一刻も早く宇宙に飛び立つこと、そうしないとサラに会えない」。
その後の一年間マオは死に物狂いで勉強した。授業が始まった当初は、マオは最低の成績だったが、半年後には、このクラスの上位に食い込むことが出来た。マ オはこの先更に長い闘いが待っていることを理解していた。このクラスは、戦乱で身内を失った教育レベルの低い外国人のクラスであり、この国の高等教育と は、大きな隔たりがあった。
マオは疲れきっていた。1年が過ぎマオは進級した。これからはこの国の生徒と同じクラスで学ぶ。マオのずば抜けた努力が実ってこの国の本当の高等教育が受 けられる。でもここから更に上に上がるためには、マオの力でも難しかった。気持ちが疲れ果て集中力が途切れてしまっていた。そんなマオを一人の日本の少女 が救ってくれた。彼女は日本人であるが、家から通うことが出来ないためマオと同じ寄宿舎から通っていた。マオの努力に舌を巻きながら、自分もマオのように ありたいと思い見つめていたのだが、マオの様子が日に日におかしくなっていくのを見かねて声を掛けてきたのだった。
「マオ!たまには息抜きが必要よ」そういって事あるごとにいろんな所へ誘ってくれた。豊川へ来てからは、宿舎と学校の往復だけ、やりたいことを全て犠牲にしてがんばってきたマオにとって最初はとんでもないことだと思っていた。
彼女によってマオは自分を取り戻し、彼女に心を開いていった。彼女の名前は鉄子、成績も優秀だがいろんな雑学にも精通し、とりわけこの地域の歴史や文化に精通していた。
マオが豊橋駅3番線の電車に乗ってどこかへ行きたいというと、鉄子は絶妙なプランを立ててくれた。
「マオ、名鉄(豊橋駅3番線)も良いけど、1番線、2番線はもっと良いわよ。」そういってある日鉄子は、マオを飯田線の旅に誘ってきた。
毎日通学のために乗っている飯田線、でもマオは豊川より北部へ行ったことがなかったし、あまり好きではなかった。
鉄子の情熱に押されというかこの時点でマオと鉄子は無二の親友として誘いを断れない間柄になっていた。(かといって勉強のほうもおろそかにしているわけではなかった)
彼女と付き合い始めてから成績はどんどん上がり、日本人クラスでも何とか上位を狙える位置にまできていた。

次の週末2人は、豊川駅で、いつもと反対方向に向かう電車で北に向かう。今日は青空フリーパスで、飯田線最深部の旧三信鉄道部分を目指す。
二 人はいつもの見慣れた電車に乗り込んだ。休日の早朝だから今日は空いている。乗り飽きた車両にマオはげんなりしながらも空いた席を占領する。その間鉄子は 外で写真を撮っている。いよいよ電車が動き出す。鉄子は席に着くや否や飯田線の沿線や歴史について熱く語りだす。鉄子の自宅はこの飯田線の最深部、秘境駅 と呼ばれる所にある。その為この飯田線に対する愛着はすさまじいものがあった。何でこんなに熱く成れるんだろう。そう思っていたマオだったが、話を聞くに つれその理由が分かってきた。
この飯田線が造られたのが太平洋戦争前で、地方の私鉄4つが合わさって全通した。その際に大変な苦労を経て建設されたようだ、特にこれから行く最深部は、多くの犠牲を出しながら完工した区間であるが、その分雄大な景観を伴ってマオに迫ってきた。
マオはこの景観に魅入られてしまった。
故郷マヤン島とはまったく違った大自然、

「私はまた来る、この大自然の中に。」その為に自分自身の心のファインダーで出来るだけ多くの景観を切り取ることにした。
そのときマオの脳裏にサラのことが浮かぶ。
お姉ちゃんは今頃何をしているのだろうか?宇宙の辺境で、それともきらびやかな銀河で何を想い生きているのだろうか、それとももう死んでしまっているのか?
それでも私は宙へ行く、どんなことがあっても。サラが知らないこの大自然を伝えたい。この旅を終えてから、尚一層その気持ちは強くなってきた。
ダイヤの関係上、少しの駅しか行くことは出来なかったが再来を願い二人は飯田線最深部を後にした。
この物語は、TV版、劇場版、OAV版、その他マクロスシリーズとは一切関係ありません。
又、著作権侵害の意思もありません。あくまで本人の妄想です。

著作元の関係者の方、問題がありましたらご連絡をお願いします。

doctor_maonome@yahoo.co.jp


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